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稀有な選手だった。
若林学は。 過去形で語るには理由がある。 昨シーズン挙げたゴール数3の打ち分けはヘディング1、足2である。188cmと恵まれた体躯を持ち合わせているものの、ヘディングでのゴールは少なかった。 更に、身体を張ったポストプレー、ヘディングでの競り合いにおいても、それほど強みを発揮するタイプでもない。かといって足元の技術があるのかと言われると答えに苦しむ。身長から反射的にポストプレーヤーをイメージしてしまうが、若林に既成概念を当てはめてはならないのだ。外見だけで人を判断してはいけない。 去年まで栃木SCには、同じく身長に長ける元Jリーガー(サンフレッチェ広島)松永一慶という選手が在籍していた(現アローズ北陸)。190cmの身長をフルに活用した松永は純粋たるポストプレーヤーだった。 だが、高身長ゆえに松永と若林同タイプと見てしまうが、見誤ってはならない。若林はポストプレーヤー、ターゲットマンというよりも、点で合わせるタイプのストライカーなのである。 それは、ハットトリックを完成させた3点目のゴールが如実に物語る。左サイドを疾走した吉見のグラウンダーのクロスに対して、若林はファーサイドに走り込み、スライディングで合わせた。まさしく、点で合わせたゴールだった。 綺麗なゴールもたまにはあるが、泥臭くゴールネットを揺らすのが若林の真骨頂である。それが、ゴール数が少ない時でも、サポーターから最もコールを受けていた所以であり、愛されている証拠なのかもしれない。憎めない顔立ちも多分に手伝っているのだろうが。 しかし、今シーズンの若林は点で合わせるだけの選手ではなくなった。頭が開眼したのだ。つまり、生まれ持った身体的アドバンテージを活かせるようになった。これまで叩き出した12ゴールの半分、なんと6ゴールがヘディングから生み出されている。最早、お分かりだと思うが、足と頭で偏りがないのだ。これがゴール量産の要因である。 只木のクロスに合わせた先制点、堀田のFKをドンピシャリのタイミングで叩いた2点目。いずれも頭からだった。 クロスをヘディングからでも、足からでも決められるようになった。また、惜しくもクロスバーに嫌われはしたが、強烈なミドルシュートも打てるようになった。Pエリア内外からゴールを陥れることが可能となってきた。 いままで、ひ弱に映っていた背番号36の背中が、今は逞しく見える。松永が移籍したことで重圧を背負い、吉田が加入で危機感を抱いたことだろう。それでも、外圧と自らの心の内圧を跳ね除けて若林は覚醒した。栃木が、地元が生み、育んだストライカーは武器をひとつ、ひとつ増やし始めている。そして、更なる飛躍を遂げようとしている。時には温かく、時には厳しく、俺達の若林の成長の軌跡を見つめていこう。
by copa003
| 2005-07-25 01:16
| 栃木SC
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